プラチナ王子sequel



俯いて、膝の上でぎゅっと拳を握りながら、早く顔の熱が引け!と願ってもなかなか引いてくれない。


カタ、と立ち上がる音が聞こえて僅かに視線を上げると、昴の手が伸びてきていた。


「!!」


その指先が額に触れた瞬間、体中の血が騒ぐ。


──ガタンッ!


気付いた時には昴の驚いた顔が目に入って、あたしの額に伸ばされた手は空中に残されたままだった。


「――……あ……」


急に立ち上がったあたしに奈々も翔太もキョウも目を見張って……1番、昴が驚いてる。


カッとまた顔が赤くなるのが分かった。



何してんのあたし……!



何か言わなきゃいけない気がするけど、何を言えばいいのか思い付かない。


だってあたし自身、何で体が昴を拒否したのか全く分からない。それよりも、驚いたあとに少し悲しそうな顔をした昴ばかり、頭を廻る。


「……」


昴は空中に置いてあった手を引っ込めて、目を伏せた。



……あたし、昴を傷つけた?



「――…っごめん!!」

「ちょっと透! 待ちなさいっ」


居たたまれなくなって、奈々の制止も聞かずその場から走って逃げてしまった。


脈打つ心臓がズキズキ痛むのに、ドキドキ弾む。



分かんない。全然分かんない。

嫌だったわけじゃないんだよ。恥ずかしかったんだよ。


でも何でこんな急に恥ずかしくなるのか、分からないんだもん。




走って走って、上履きのまま寒すぎる裏庭に出てしまった。


「うーっ!」


しゃがみ込んで、膝に頭をくっつける。



……傷つけた。絶対傷つけた……。


どうしよう。どうすればいいの? 逃げない方が良かった? 何でもない顔すれば良かった?


「無理だよぉ~……」


だってきっと、また同じことしちゃうもん。また昴に悲しい顔させちゃう。




どうしよう。

昴がもう笑ってくれなかったら……。