「透~。もう昼だぞー!」
机に突っ伏したままのあたしの背中に、朝と同じ重さが感じられた。
「……ほっといてくださひ」
「いつまで萌えてんだよ」
「萌えてないから!」
「うおっ!」
ガバッと起き上がったあたしの顔を見て目を見張った湊磨は、すぐに笑う。
「真っ赤じゃん!」
「うるさいうるさーいっ!」
仕方ないじゃん! 昴にあんなことされちゃ……っ。
「もー! 湊磨のせいで思い出しちゃったじゃんか!」
「俺のせいにすんなよっ」
ダメだ。何か今日はもうダメだ!
心臓がいつまでもドキドキして、顔の熱が完全に引いてくれない。
「病気かもしれないっ」
「で? 食堂には行くんでしょう?」
前の席に座ってる奈々があたしの言葉を無視して飄々と聞いてくる。
だけどあたしの口は開いたり、閉じたり、開いたり、閉じたりの繰り返しでいつまでたっても言葉が出てこなかった。
行きたいよ。
行きたいけど、まともに昴の顔見れなそう……。
「待ってられないわ。行くわよ」
「っえぇ!?」
心の準備すらさせてくれないの!?
慌てて席を立って、まだ近くにいた湊磨と教室を出ようとする奈々を交互に見る。
「~っ待って奈々! あたしどういう顔すればいいの!?」
財布の入ったカバンごと持って、奈々を追い掛けた。
「いつも通りでいいじゃない」
「いつも通りって……!」
「気持ち悪い感じでしょ」
「……」
あたしいつも気持ち悪い感じなの……?
ヒドい! 奈々の悪魔!



