「One more」
「ノーッ!です!」
昴はクスクス笑って、あたしの頭を撫でる。
くそう! 恥ずかしいじゃん湊磨のバカ! でも昴が嬉しそうだから今回は許すっ!
きゅっと手を握り返すと、昴は赤くなって唇を結ぶあたしを見下ろしながら微笑む。
「かえろーっ」
声の弾む昴に手を引かれ、あたしは湊磨たちに「バイバイッ」と言ってから一歩踏み出した。
空からはハラハラと雪が舞い落ちて、地面に積もった雪は踏み締めるたびサクサクと音を立てる。
「……いつまで笑ってるの」
繋いでない右手で、昴はずっと口を覆っていた。
昴だから好きなのっ!って勢いで言ってしまったことが、王子はよっぽどお気に召したらしい。
「トール、シアワセ?」
ククッと笑ってあたしを見つめるブルーの瞳。
これ以上あたしに恥ずかしい思いをしろと言うのでしょうか。もう十分恥ずかしいのに! この隠れドS!
「めちゃくちゃハッピーですっ!」
「アハハッ!」
あははって! 昴はどうなのさ!
口を尖らせていると、昴は繋いでいた手をポケットに入れた。
あたしの右手は昴のポケットの中。見上げると、大好きな笑顔。
「シアワセ~」
寒さで少し赤くなった高い鼻。ふにゃっと緩む頬。きゅーんと高鳴る胸は、いつも昴にしか反応しない。
「あたしもシアワセ!!」
「わわっ」
無理やり抱きつくと、ふたりして雪の上に倒れ込んでしまった。
「トール~」
「うはは!」
雪まみれの昴も世界一綺麗です!
「じゃれてないで帰るわよ」
「まるで雪降って喜んどる犬やな」
後ろにいた奈々と翔太が呆れて笑っていたけど、満面の笑顔しか浮かばない。
シアワセなんだもん。
昴といると、幸せになる。



