――――――…
「――透! 透っ」
湊磨が転校してきて早一週間。
ある日の授業中、あたしの斜め後ろの席になった湊磨に小声で呼ばれた。
振り向くと、両手で顔を左右に引っ張ってめちゃくちゃ変な顔をしている。
極限まで横に伸びた目や唇に、思わず吹き出してしまった。
「ほ~る~」
「ぎゃはっはっはっ! やめて呼ばないで! ひーっ!!」
「うっせーぞ向井!」
数学の授業中だったため、つんちゃんの攻撃マシンガンチョークがあたしの顔にヒット。
「何すんのさ! チョークの無駄遣いすんなっ」
「テメーが授業中に笑い出すからだろーが!」
「だって湊磨が変顔してくんだもん!」
「碓氷のせいにしてんなよチビッ」
「はぁ!? ちゃんと見てよほらっ……」
振り返ってあたしが指差した湊磨は、いつの間にかお洒落メガネをかけて「何か?」とか言いながら真面目にノートを書いてる……フリ。
「湊磨の裏切り者ぉおおお!!」
「おら向井! 問い3解け!」
「分かりません!」
「考えろっつーのぉおおお!」
ギャーギャー騒ぐあたしとつんちゃんに、確信犯の湊磨は爆笑。
大聖も忍も奈々もクラスメイトも、また始まったとクスクス笑っていた。
もーっ! 覚えてろよ湊磨っ!



