「――あ! そこそこ! レンガ調のメルヘンな家!」
「え!? ……うははっ! メルヘンて!」
「確かに!」と笑いながら、湊磨はあたしの家の前でスクーターを停めてくれた。
「いや~。ありがとうね! めっちゃ楽だったよー」
「いやいや。何かあったら彼氏さんに頭上がりませんので」
「ははっ! 昴は全然怖くないよ?」
メットを返すと、不意に湊磨の指が頬に触れた。
「髪食ってる」
「……おお。ありがとっ」
ビックリした!
「じゃーな! また明日ーっ」
「うん! バイバーイッ」
湊磨に手を振って、家の門を開けて中に入る。
「ただいま~!」
「おかえりー」
玄関でスニーカーを脱いでいると、リビングからのんがひょっこりと顔を出した。
「のん~! ただいまっ!」
あたしよりだいぶ背の高いのんに抱きつくと、頭を撫でられる。
「昴に送ってもらったの? 原チャの音聞こえたけど」
「ううん! 友達! 湊磨っていって、今日転校してきたんだ。超いい奴だよ。バスケも上手いらしいし」
のんから離れてリビングへ向かうと、「仲良くなったんだ?」と横を歩くのんが首を傾げた。
「湊磨気さくだからね~。今日歓迎会で、クラス全員とメアド交換したんだよ」
「出た! クラス全員っ」
ケラケラ笑うのんに癒やされながら、あたしはキッチンに立っていたお母さんにも湊磨のことを話した。



