「んじゃウチらも帰ろっかー! 湊磨の家どこなの?」
「K駅で降りる」
「え!? 一緒!」
「うっそ。マジで? すげー偶然っ」
ハハッと笑う湊磨に「ねっ!」と笑顔を向けて、駅構内へ入る。
電車に乗ってからはバスケの話やクラスメイトの話で盛り上がったり、湊磨のことを色々聞いた。
兄と弟がいて、もうすぐ高校を卒業するお兄ちゃんは一緒に来なかったから、今は両親と弟と4人暮らしとのこと。
地元には1年半以上付き合った彼女がいて、転校することが決まる前に振られたらしい。
ものすごく落ち込んだんだけど、その後すぐ転校することが決まって、もうふっきれたって笑っていた。
「うーわっ! 真っ暗だね」
「あんだけ遊べばな~」
K駅に着いて外に出ると、湊磨はダウンのポケットから何かの鍵を取り出した。
「透、送る。家どこ?」
「は!? いいよ悪いよ!」
「いやいや、ダメだろ。何かあったら彼氏さんに申し訳ないし。まあ俺が自己満で送りたいだけだから、気にすんな!」
「……やっぱ湊磨っていい奴だね!」
感動して言うと、湊磨は声を出さずに笑う。
「ちょっと待ってて」
湊磨は駐輪場に向かって、暫くすると戻ってきた。
「え? これ原チャ?」
「ビックスクーター。原チャの2人乗り版みたいな」
「へ~すごいね!」
「まだ2人乗りしちゃダメなんだけどな~。内緒な?」
湊磨は悪戯に笑いながら、あたしに大きい星マークがついてる赤いメットを被せた。
うぉおおお初めてのスクーター! 感動!
湊磨はエンジンを掛けると、バックシートにまたがったあたしに振り返る。
「エンジンそんなうるさくねぇけど、道案内声デカめでよろしく」
「了解! とりあえずそこ右っ!」
湊磨が地面を蹴り上げると、スクーターはゆっくりと発車した。
道路に出ると、あたしは自分の家まで道案内。どうやら湊磨は同じ地域の西側に住んでいるらしかった。
「ここ通り道だわ!」
「マジで! やっぱ家近いかもね!」
偶然て重なるもんだなぁ。



