「――俺1度にあんなメアド交換したの初めてだわ」
歓迎会は2次会まで行われ、それぞれが帰宅する中、湊磨が可笑しそうに言った。
「はは! だろうね!」
帰り際、湊磨はクラスメイト全員とメアド交換をした。
「あの光景は入学式以来だよな」
大聖が言うと、奈々が同意するように頷く。
「入学式の時は大変だったわよね」
「何なに? 何かあったの?」
「ほら、俺らのクラス仲良いだろ? 入学式の日に全員でメアド交換したんだよ」
「マジで!? すげーっ」
そうそう。あれは凄かったなぁ。教室でぐっちゃぐちゃに入り乱れて、あっち行ったりこっち来たり。
そんな思い出話をしていると、分かれ道に差しかかる。
「じゃ。俺らバスだから」
「また明日な~!」
忍と大聖に手を振って、あたしは湊磨を見上げた。
「湊磨は何通?」
「俺は電車通」
「一緒じゃん! ねー奈っ……」
奈々に視線を移すと、黒いオーラが出ていた。
「な、奈々……?」
真顔で携帯を見てた奈々は、ゆっくりあたしに視線をうつす。
「先に帰ってちょうだい」
「え? 何かあったの?」
「バカが、怪我したから来てって」
「翔太!? 怪我って……大丈夫なの?」
「どうせ軽傷でしょ。昼間のこと根に持って呼び出しただけに決まってるわ」
「うはは! 翔太らしいじゃん! 送るよっ」
「大丈夫よ、すぐそこだから。じゃあね、湊磨もまた明日」
「おー! 今日はありがとなっ」
奈々は軽く微笑んで、翔太が所属するダンスクラブに向かって行った。
その後ろ姿を見送りながら、頬が緩む。
「何笑ってんの?」
「んー? 奈々、あんなこと言ってるけど本当は心配で会いたいんだよ」
「マジか! ツンデレってやつ?」
「奈々の場合ツンツン、ツンツン、ツン、デレって感じだね」
「デレ少なっ!」
それが奈々ですからね。



