「――んっだよ……」
「あーあ……」
忍の悔しそうな声と、後ろに座る大聖の嘆く声が聞こえたけど、あたしは心の中でガッツポーズ。
やっ……たー!!
転校生は黒板に文字を書く担任の横に立つと、ひとりで挨拶を始めた。
「どーもっ! 碓氷 湊磨(うすい そうま)です。親の転勤でこっちに来ました。よろしくお願いします!」
175センチくらいはあるだろう転校生は笑顔を浮かべる。
切れ長の瞳はつり目がちで、アシメの髪は真っ赤。片方だけ見える耳には遠目でもピアスが何個も付いてるのが分かった。
「隼人先輩みたいね」
前に座る奈々があたしに振り返りながら言う。
チャラそうって言いたいんだね? まあ、でも。
「男で良かったよ」
あたしは安心した! 神様ありがとう!!
「俺バスケ部入るつもりなんで、バスケ部の人はよろしくっ」
ニカッと笑う湊磨くんに、あたしのテンションは更に上がる。
「大聖! バスケ部だってよっ」
後ろを向くと、男は嫌だと手の平を返した大聖も嬉しそうにしていた。
「新しいバスケ仲間だな」
「男……しかもバスケって、あり得なくね? 俺マジで可哀相じゃね?」
大聖の後ろにいる忍はブツクサと文句を言っている。
「ふふん! あたしの勝ちだねっ」
「てか隼人先輩っぽくね?」
「それ奈々も言ってたよ」
まあ……なんだか楽しくなりそう!



