「じゃあ奪われちゃうかもね、昴のこと」

「はひ?」


う……奪われる?


「すっごく可愛い女の子が転校してきて、昴、一目惚れしちゃうかも」

「いやだぁあああああ!!」


断然、男希望で! 俄然、男希望で!


「大聖! あたしも男希望!」


まだ言い争っていた大聖と忍の会話に参加するようにハイハイ!っと手を上げるあたし。


「だよな~っ!」

「はん? 女だろ、超セクシー系で悩殺系の」

「そんなのダメー! 昴が誘惑されたら困るっ」

「え。じゃあ俺やっぱ女子希望。リコが誘惑されちゃ困る」

「大聖の裏切りものぉおお!!」


後夜祭で唯一メアドを交換した3年生とクリスマスに付き合い始めた大聖は、あっさりと手の平を返す。


ギャーギャー騒ぐあたしたちを楽しそうに眺める奈々が味方してくれたら負けないのに!



「何してんだお前らぁ~。喧嘩すんな。はい座れー」


今にも取っ組み合いが始まりそうだったあたしたちに、教室に来た担任が呆れたように言った。


奈々がボソッと「いいところだったのに」と呟いたのは聞こえないフリ。


「先生~。転校生くるってほんと?」


大人しく自分の席に着くと1人のクラスメイトが尋ね、担任は頷いた。


「女だろ」


2つ後ろの席に座る忍にあたしが「絶対男!」と反発すると、先程の言い争いを見ていたクラスメイトはクスクスと笑う。


「ほらほら。今から紹介するから、静かにしろよ~」


絶対男でお願いします神様! 可愛い女の子もセクシーな女の子も絶っ対ダメ! 勝ち目ないから!



「碓氷~。入っていいぞー」


担任の声で、ガラッとドアが開いた。