「ナナ、ざんねんだネ」
「うん……。でも、しょうがないかなぁ」
「ナナはいそがしーの?」
「お嬢様だからね」
「オジョーサマ……」
奈々はあまり自分のことを話さないから、あたしも詳しくは知らない。
お父さんが有名な大企業の取締役で、お母さんは社長補佐なんだけど、昔は有名なモデルさんだったらしい。
奈々には8歳上のお兄さんがいるから後継ぎはお兄さんなんだけど、長女も長女で色々あるみたいで……。
お嬢様の奈々が何でこんな平凡な公立高校に通ってるのか、その理由はすごく単純だった。
『お嬢様学校なんて堅苦しくて、何が楽しいのか理解出来ないわ』って言ってたけど、お嬢様である自分が嫌いなんだろうなって思う。
『それに透がいるもの』なんて言われて、深く突っ込めなかったけど。
「奈々も色々大変なんだよ」
心配だなぁ……。
お稽古なんて高校に入ってから暫くなかったのに、何かあったのかな。
うーんと眉を寄せていると、昴はあたしの心情を読み取ったかのように頭を撫でてくれた。
「ナナにはトールがいるから、ガンバレるんだネ」
「……昴……」
あたしは昴がいるから毎日早起き頑張れますっ!
なんて思ってたら、駅に着いてしまった。



