「苦くないから大丈夫だ、よ……?」
そう言ったあたしの口元へ、昴が薬を差し出してきた。
あの……昴さん? あたし風邪引いてないけど……。
「……あたしが飲んだら、飲む?」
頷いた昴から仕方なく薬を受け取って、口の中に放り込む。昴はベッドにもたれかかり、あたしが飲むのを眺めていた。
毒味みたいだな……。
そんなことを思いながらペットボトルの水を口に流し込んで、飲み込もうとした瞬間腕を引っ張られた。
「――!」
昴の大きな手が首に回され、なぜかキスをされる。
「んんーっ!?」
首を後ろに倒した昴のせいで、あたしもそのまま前のめりになった。
「……~~っ」
何が何だか分からないまま、昴はあたしの口の中から薬と水を奪ってしまう。
ゆっくりと顔を離せば、深いブルーの瞳が妖しげに光った気がした。
昴は水に濡れた口元を拭うと、いそいそとベッドへ戻り布団を被る。
まるで何事もなかったように平然と寝始めましたけど……?
ポツンと取り残されたあたしは、ふとペットボトルがフローリングに落ちて中の水が零れていることに気付く。
「……」
ボッ!と一瞬で真っ赤になるあたし。
なぜマウス トゥー マウス!!
王子は口移しじゃないと薬を飲まないのですか!? なんなんですか!?
やり場のない感情に顔を赤くさせたまま、床に零れた水を無心に拭き続けた。



