[angle:キョウ]
「――キョウくん」
「あ。こんにちは」
人が溢れる街の中心部。時計台の前で待っていると、背の高い綺麗な女性がやってきた。
「どこか行きたい場所あります?」
微笑むと、妖艶な笑みを返される。
「ホテル、予約しといたの」
「ぶふっ!」
「イヴくらい、ビジネスの話はやめましょうよ」
艶やかなルージュがひかれた唇でそう告げられ、俺は肩をすくめた。
「それもそうですね」
……迫られたら、どうにかして避けよう。
俺の腕に、派手なネイルが目立つ手が絡まる。
「ところでキョウくん? 私の後には何人予約が入ってるのかしら。明日もデートで大変なのよね?」
危うく吹き出してしまいそうになり、慌てて笑顔を作った。
「ビジネスの話はしないんですよね?」
「ほんっといい性格してるわ」
賑わう街にコツコツとピンヒールの音が響く。すれ違う人々は断然カップルが多い。
俺とこの人もカップルに見えるのだろうか。
取引先の令嬢や昔から親交のある人たちにランチやディナーに誘われて、断る理由がないので全部引き受けただけなんだけど。
3時間後には別の人が隣に並ぶ。
……俺ってほんと、経営者に向いてるかも。
昴と翔太は仲良くやってるかな。
ぼんやりとそんなことを考えながら、俺のクリスマスが始まった。
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