「……私も今日お稽古だから。2人は? どこか行くの?」
「ウン」
「そう。じゃあね、また明日」
「っ奈々!」
軽く微笑んで帰ろうとする奈々を思わず呼び止めちゃったけど、次の言葉が出てこない。
「なぁに?」
「……っううん! お稽古、頑張ってね」
「ええ。ありがとう。……ねぇ、透?」
ヒッ……!
極上の笑顔が真上から降り注いで、あたしは小さい体を更に縮み込ませる。
「翔太に余計なこと、言わないわよね?」
「い、言わない! 言いませんっ!」
「そう。ならいいわ」
完全にあたしに口止めを施した奈々はにっこり笑って、流れるような足取りで帰っていった。
うう……ごめんね翔太。やっぱり無理っぽいです……。
「――……」
しょぼん、と肩を落としていたあたしの顔を昴が覗いてきたかと思えば、手を繋がられる。
「かえろ?」
「……うん」
優しく微笑む昴を見て胸が温かくなったけど、頬まで少し赤くなったのが分かった。
いい加減慣れないとなぁ……。
歩き出した昴の隣に並びながら、そんなことを思う。



