従業員はみんな、俺が王良グループを継ぐと思ってるんだよね。


継がない上に癒王亭のオーナーは徠さんなんだから、普通に接してくれていいのに。


そんなことを考えながら奈々にも紙袋を手渡す。


「ありがとう」


微笑んで受け取ってくれた奈々に笑い返すと、透が興奮気味に口を開いた。



「ねぇ奈々! キョウが御曹司だなんてビックリしたよね! 宇宙人じゃなかったねっ」

「ちょっと。私まで宇宙人だと思ってたみたいな言い方やめてちょうだい。知ってたわよ、キョウが王良グループの御曹司だってことくらい」

「はひ……? え……あ、お見合いする前に知ったの……?」

「入学する前から知ってたわよ。こんな大物が平凡極まりない公立高校に通ってるなんて、私たちの間では有名だもの」


まるで雷が落ちたように衝撃を受けた顔をする透に、奈々は楽しげな瞳を向ける。


まあ俺も友達になる前から奈々のことは一応知ってたけど、特に接点なかったからなぁ……。


「教えてよ! あたし球技大会の前からキョウのこと謎がってたの知ってるじゃん!」


そんな前から!?


「だって悩んでる姿見るの楽しかったんだもの。ふふっ」


俺は体を震えさせて笑いを堪えるも、透は「奈々のバカ!」とぎゃんぎゃん喚いてる。


「まあまあ。透、俺の謎が解けて良かったじゃん」


そう言いながら微笑むと、透はムスッとしてしまった。


「ふん! キョウも奈々も、もう知らない! デビルツインズめっ」

「なぁに? そのネーミングセンス。鳥肌ものね。気持ち悪い」

「ぶくく……っ!」

「おいあんま透のことイジメんなやっ!」

「げんきだしてトールッ」


奈々が毒舌を吐けば透は落ち込んで、翔太が仲裁に入ると昴は透を慰める一連の流れ。



ほんと、みんなといると飽きない。