「――っは! お土産! のんにお土産買いたかったのにっ」
白百合の間を出て玄関に向かう途中、透がアタフタし始めた。
「オミヤゲ? ノンに?」
「癒王亭に行くって言ったら、癒王亭名物の栗ようかんが食べたいって……」
……のんって確か透の弟だよね?
「俺も食いたい! 美味いんやろ!?」
翔太までもが言い出し、俺は声を掛ける為に口を開いた。
「食べたいなら贈るよ。今日のお詫びに」
「「やったーっ!」」
お詫びって言っても奈々みたいに策謀してたわけじゃないんだけど、実際どうなるのか楽しんでたのも事実だからね。
1階ロビーにある土産屋に入った俺は、1番サイズの大きいものを5本従業員に用意するようにお願いした。
「キョウ! 1番小さいのでいいよっ」
「え? 何で? 家族も食べるでしょ?」
紙袋に入れた栗ようかんを昴と翔太に渡せば、ふたりは多分サイズなんか気にせずに喜んでくれる。
「や、でも……」
売り上げとかの心配してるのかな。
「いいよ気にしなくて。ね?」
お土産屋の職員に笑顔を向ければ「もちろんです!」と大声で言われた。
「ほらね。はい」
「……ありがとうっ」
透は素直に受け止ってくれたけど、俺たちの横を通る従業員が頭を下げてくるから不思議そうにしている。
「……キョウは凄いね。バイトって何の仕事してるの?」
「癒王亭の監視とか内部調査」
ニコッと笑って言うと、透は驚いて目を見開いていた。



