「ないよ全く。親父は早く引退したいって言ってるし、俺が継がないって言ったらじゃあ後継者誰にする?って話になって。ライアンに話したら楽しそうって言うから、じゃあライアンでって話になったくらいだから」
「そうなんだ……あれ? でもライアンは癒王亭の次期オーナーなんでしょ?」
「それは下積み時代の話。癒王亭は王良グループの傘下だけど、徠さんが頑張ったから全国展開しようって話になってるんだよね。ライアンが大きくなる頃には1つの会社としてやってけるぐらいにはなってるから、そしたら親父は引退して癒王亭と王良グループは合併。ライアンは晴れて社長。解決」
「な、なるほどっ!」
絶対分かってないね、透。
「まあ、もしライアンの夢が変わっても徠さんがいるからね」
徠さんに笑顔を向けると、苦笑いを返された。
「俺はこれ以上忙しくなりたくないよ。早く大きくならないかな……ライアン」
「ていうかそろそろ会ってきたらどうです? 若女将に」
ニコニコ笑って言うと、徠さんは真っ青になった。
「キョウ……お前、何で知って……」
「ライアンなら大丈夫ですよ。あの通り昴と遊んでるし」
「……お前は本当、経営者に向いてるよ」
徠さんは苦笑いしながら立ち上がり、ライアンに一言告げてから白百合の間を出ていった。するとその様子を見ていた透が首を傾げる。
「何で若女将?」
今日は透に質問されてばっかだな。
「若女将と徠さん両思いだから。お互い片思いだと思ってるけど」
「へ~……」
若女将は俺の義姉だから色々と問題があるんだけど、まあ誰かが背中を押せば何とかうまくいくふたりだと思う。
そんなことを考えていると、関心していた透がハッと何かに気付いたような顔をした。
「両想いって……! キョウお見合いのことも相手の徠さんのことも知ってたなら教えてよっ!」
どれだけ怖い目にあったか……と、透はうなだれている。



