「今はそれどころちゃう! 俺と一緒に帰るで!」
「どうして私が翔太と帰らなきゃならないの? それより何でここに居るのよ」
翔太は大股で歩いて、そっぽを向いた奈々の手を掴んだ。
「言っとくけどなぁ! あのキス! 美鈴が俺の不意を狙ってしてきたんやで!? 美鈴は中学からのダチ! 俺は被害者! それだけやっ!」
「……だから何よ」
眉を寄せて翔太を睨む奈々。入口で立ち止まるあたしと昴側からは翔太の顔は見えないけど、拳を握ったのが分かった。
「疑ってたから言うてんねん! 俺が好きなんわ美鈴ちゃうやろ!? お前や! 奈々っ!」
「……今お見合い中なのよ。帰ってちょうだい」
「はぁ!? 結婚する気かぃな! 相手の男のこと好きでも何でもないんやろ!?」
あぁ~……キレちゃダメだよ翔太ーっ!
ハラハラしながら見ていると、奈々は呆れたように溜め息をつく。
「大事なお見合いなのよ。翔太に言っても分からないわ。邪魔しないで」
「こないなことせぇへんでも俺がお前を自由にしたるわ!!」
「…………」
奈々は翔太の勢いに、目を丸くしてしまった。
「分かったらはよ帰るで! わけわからんオッサンと結婚なんてさせて堪るかっ!」
翔太は奈々の手を引っ張って、強引に立ち上がらせる。
「ちょっと!」
翔太の力の強さに奈々は成す術がないみたいで……。その時だった。
「……何事かな?」
翔太の足が止まり、その目は見開かれている。
あたしと昴の後ろから男の人の声が聞こえた。
「「――……」」
絶っっ対、奈々のお見合い相手だ……。
あたしと昴は恐る恐る振り向く。
「「――!!」」



