「「「…………」」」
あたしたち3人は壁に耳をつけた状態で、かれこれ一時間。端から見ればかなり怪しいと思う。
途切れ途切れにしか会話は聞こえなかったけど、分かったことがあった。
奈々のお見合い相手はメタボリック(予想)のバツイチ子持ち。
何かの経営者で、趣味は株を見ること。
甘党で、最近のお気に入りはストロベリーボンプらしい。
……無理。絶対に嫌。そんなメタボリックと結婚なんてしないで奈々!
奈々はこの世で1番美しいんだから! 宇宙1は昴だけどっ!
なんて考えていると、「すいませ……外し……」と男の声が聞こえた。
あたしたちは急いで襖に向かって走ると、事前に少し開けて置いた襖から廊下の様子に耳を澄ます。
襖の開く音と誰かが歩いていく音を確認した。
「今がチャンスだよ翔太!」
「ショータ! Do your best!」
「おっ、おう!」
あたしと昴は翔太を筆頭に廊下に出て、白百合の間を見上げた。
緊張する~!!
心臓がバクバク鳴る中、翔太は「行くで」と小声で言い、一呼吸置いてから襖に手をかけた。
いざ…………出陣っ!
──スパーーンッ!
「奈々っ!!」
翔太は思いきり襖を開けて、大きく一歩中に踏み込んだ。
「――……ビックリしたじゃない。襖はゆっくり開けることも出来ないの?」
な……奈々っ!
翔太の後ろから奈々を見ると、鮮やかな紅色の着物を着ていた。
トップで1つに纏められた髪には小花が散りばめられたかんざし。メイクもいつもと変わらない気がするのに、とてもじゃないけど16歳には見えない。
超絶的に綺麗ですっ!



