何がいいかな~っ! 確か有名なお菓子が……。
「――ん?」
ふと今通り過ぎた場所を振り返ると、ビックリして心臓が口から出そうになった。
──スパーーンッ!!!
「うおっ! ……なんやねん透! 襖はゆっくり開けんかい!」
急いで襖を閉めたあたしの口は言葉を発しようとしてもうまくいかない。
「どしたの、トール」
きょとんとする昴と首を傾げる翔太に、やっと口が動いた。
「――っ隣! 白百合の間!!」
一瞬の沈黙のあと、「「っえぇええええ!?」」」と昴も翔太もビックリしている。
「んなっ! ほんまか!? なんやねんキョウ! やるなアイツ!」
「ビックリした~……」
「あたしもビックリした!」
ドバッと一瞬で冷や汗出たからね……。うかうか旅館内歩けないな……。
「とりあえず座ろう! 落ち着こうっ」
「せやな……!」
大人しく座ってみるけど、あたしよりも翔太がソワソワしてる。
「奈々の見合いって何時からやっけ? 今何時?」
「14時から。今13時過ぎ」
「アッカン! もうすぐやん!」
緊張してるのか、畳に倒れ込む翔太は「あー」とか「うー」とか唸り始めた。
……うーん。
「ねぇ、どうする? お見合い相手、気持ち悪いオッサンだったら」
「ぎぃあーー! 考えたないわっ! 無理や! 奈々に油ぎっしゅなオッサンとか似合わへん! メタボリックやったらどないする気や奈々!」
まさに美女と野獣!と笑い合うはずが、逆効果でした……。



