──お見合い当日。
「桂木様、ようこそ御出で下さいました。若女将の響花と申します」
「コンニチハ」
日曜日、太陽が一番上に昇る頃。あたし、昴、翔太の3人は癒王亭に到着。
「春菊の間にご案内致します」
若女将のあとを付いていくあたしたちは、挙動不審気味にコソコソと話し始める。
「ちょっ……ちょっと! 何ここ……っ」
「リッパなとこだね~」
「俺ら場違いと違うん……!?」
癒王亭……有り得ないくらい敷地面積が広い。温泉旅館らしいけど、高級さが見て取れた。
一般庶民には敷居高すぎます! ひぃ!
「こちらが春菊の間で御座います」
――広っ!! 20畳くらいあるんじゃないの!?
「桂木様。本日はお食事のみとお伺いしておりますが、何時頃お召し上がりになさいますか?」
「あ、今で! もう準備してもらって大丈夫ですっ」
「かしこまりました」
綺麗な若女将さんはニコリと微笑んで、襖を閉めた。
「「「…………」」」
自分が場違いなのは承知の上で、ジワジワと興奮がせり上がってくる。
「――っ広いぃいいいい!!」
「デケぇーーっ!!」
部屋の中をバタバタと走り回るあたしと翔太とは違い、昴は窓から冬の景色を眺めて感動していた。
さすが王子! こんな高級旅館でも動じないんですねっ!
見て! あたしなんて立派な景色眺める前に走り回っちゃったぜ!
ちょっと自分が恥ずかしくなりながらも、ふたりに声を掛ける。
「あたしお土産買ってくるね!」
こんな場所に来れるのはもう二度とないかもしれないからね! 探検も兼ねて愛しい弟のんにお土産を買わなければ!
返事を待たずに、あたしは浮足立って部屋を出た。



