「癒王亭かぁ~…どうする?」
奈々の家を後にしたあたしたちの考えは、やっぱり変わっていなかった。
昴たちを駅まで見送る間に作戦会議。
「おいキョウ。白百合の間ってどこらへんやねん」
「ん? 1番端っこ」
「分かりづらっ! まあええわ。キョウに案内させれば済む話やもんな……」
「ウンウン」
「あ、ごめん。明後日バイト」
サッと片手を顔の前に出して謝るキョウに、あたしと翔太の驚きが静寂な住宅街に響く。
「キョウだけが頼りなのにっ!」
「自分が何言うとるか分かってるん!?」
「キョウ、いないの……?」
昴が困ったように言うと、キョウは財布のポケットから何かを取り出した。
「はい。ここに書いてる通りに来れば大丈夫だから」
キョウが差し出したのは、名刺くらいの大きさがある癒王亭の紹介カード。
裏を見ると、住所と電話番号、簡易的な地図が載っていた。
「あと白百合の間の近くに部屋も取っておくから」
「え!? いいよそこまで!」
木陰に隠れて乗り込むし!
「癒王亭は警備厳しいんだよ。友達が不審者で捕まるのは嫌だからね」
「そ……そうでしたか」
危うく警察に御用になるところでしたね……。
駅に着くと昴はあたしを送ると言ってくれたけど、遠慮して改札口でお別れ。
「じゃあ桂木で予約しとくから」
「またねトール」
「ほななー」
「またねーっ!」
手を大きく振りながら3人を見送って、グッと両拳を握りあたしも帰路に着く。
お見合い、なんとしてでもブッ壊さなきゃ!



