「だけど分かっていても、全部を受け止めることは出来ないんだろうね。……だから、俺は奈々を自由にさせて欲しいと両親に頼んだんだ。そしたら父親が縁談を持ってきて……上手くやれば、もう何も言わないって。自由にさせるって約束してくれたんだよ」
「せやけど……! それって結婚せなアカンってことちゃうん!? 自由なんか最初からないやんけっ!」
翔太が声を荒げると、どこか寂しげに話していた皇さんはやっぱり眉を下げたままで、微笑むだけだった。
そんな皇さんに少し身を乗り出していた翔太は下がって、眉間にシワを寄せる。
「……奈々の気持ちはどうなんねん。いくら自由になれるからって、横暴すぎるやろ」
「父は良い意味でも悪い意味でも、自分の会社のことしか考えてないから。でも大丈夫……なんて、君には気休めにしか聞こえないかもしれないけど。奈々は今まで一度だって、父との勝負に負けたことはないよ」
「透と同じ高校に通ってるのが証拠」と付け足した皇さんは、あたしたち4人の顔を1人ずつ眺めていく。
「――ありがとう。こんな風に心配してくれる友達がいて、奈々は幸せ者だね」
優しく目元を緩ませた皇さんに、あたしたちは何も言えなかった。
「翔太くんに昴くん。それから恭くんだよね? 奈々と友達になってくれたこと、すごく感謝してる。少しひねくれ者だけど……これからも仲良くしてあげてね」
「皇さん……」
「透も。いつもありがとう」
……あたしたちがお見合いを壊したら、奈々はまた家に縛られてしまうのかもしれない。
奈々をいつも心配してた皇さんが大丈夫と言うなら、奈々ひとりでも大丈夫かもしれないけど。
あたしたちは、奈々の友達だから。
あたしは奈々と、翔太が好きだから。
やっぱり、やるべきことは変わらないんです……皇さん。
「奈々は何があってもあたしたちが守りますから! ねっ!」
「……当たり前やん」
「ナナはイイコだもんね~」
「これからも仲良くしますよ」
あたし達が続けざまに言うと、目を見張った皇さんはすぐに幸せそうに笑ってくれた。
お見合いブチ壊して、何かとんでもないことになったらごめんなさい……。



