「奈々のお見合いってどこでするんですかっ!?」
「癒王亭だよ?」
サラッと教えてくれたーーっ!!
「ユオーテー?」
「ゆおうていだって! それどこ!?」
翔太に顔を向ければ、翔太はあたしに戸惑いの表情を見せながらも、キョウの腕を叩く。
「あれやん……癒王亭って確かお前の……やんな?」
「俺のバイト先だね」
キョウのバイト先!? てか癒王亭って何!? 旅館か何か!?
「癒王亭の白百合の間で、奈々はお見合いするんだよ」
こんなあっさり聞けるなんて……! 優しすぎます皇さん!
「場所を聞きに来たの?」
不思議そうにする皇さんに、あたしは慌てて左右に頭を振る。
「違います! 用事っていうか、奈々に話があったんです! ただお見合いってどこでするのかな~って、ふと思いまして!」
「ああ。そうなんだ」
ごめんなさい皇さん。お見合いをブチ壊しに行くなんて口が裂けても言えません!
「あの……ちょっと聞きたいんすけど、いいですか?」
躊躇いがちに翔太が突然口を開くと、皇さんは微笑んだ。
「もちろん。なんだい?」
あたしたち3人は互いに少し目を合わせて、黙って翔太を見つめる。
「何でまだ16の奈々が、お見合いなんてしないといけないんすか?」
真っ直ぐ自分を見つめてくる翔太に、皇さんは困ったように笑った。
「奈々が自由になる為なんだ」
……自由?
「透は知ってるよね? 奈々がこの家に縛らてたこと」
黙って頷くと、皇さんはあたしから翔太に視線を移す。
「見ての通り、奈々はこの家の娘だから。どこに出しても恥ずかしくない令嬢にならなくちゃいけない。本人が望まなくてもね。それは奈々本人も分かってる」
「……」



