「やあ。久しぶりだね、透」
「――っ皇さん!?」
現れたのは奈々のお兄さん、皇(こう)さんだった。
奈々に負けず劣らず綺麗な顔をしていて、雰囲気からしてお金持ちの人って感じなんだけど……。
「寒いだろう? 上がって」
ものすごく優しいんだよね!
「奈々に激似やん……」
「奈々の男バージョンだね」
「ナナのbrother?」
驚いている3人にも皇さんは「君たちも。どうぞ?」と微笑みを向ける。
昴たちは軽く頭を下げて、大理石が敷き詰められた玄関で靴を脱ぎ始めた。
「皇さんが家にいるなんてめずらしいですね」
「ああ、最近大きな仕事が片付いてね……というのは建前で、奈々の顔を見に来てるだけ」
廊下を進む皇さんについていけば、奈々とはまた違った美しい笑顔が降り注ぐ。
相変わらずシスコンなんですね!という言葉は飲み込んで、ブラコンなあたしは客間にお邪魔した。
「せっかく来てくれて悪いんだけど、奈々は出掛けてるんだ」
「えっ! そうなんですか!?」
通してくれたからてっきり居るのかと……。でもこれってある意味不機嫌な奈々と鉢合わせなくてラッキーだよね!?
そうみんなに目で訴えると、フカフカのソファーに座ったあたしとは違い、翔太たちは客間の入り口で立ち尽くしていた。
「はは! 君たちも適当に座っていいよ」
「あ……はい」
翔太たちが恐る恐るソファーに座ると、皇さんはあたしの向かい側で長い足を組む。
「今日はどうしたの? 何か奈々に用事?」
「あ、はい。ちょっとヤボ用で……」
奈々が居ないなら怒られなくて済む!と思っていたあたしは、当初の目的を思い出した。
「皇さんっ!」
「なんだい?」
コーヒー片手に首を傾げる姿といったらものすごく綺麗です! さすが奈々のお兄さんっ……じゃなくて!



