「――いやいや……は?」
「Oh~!」
「素敵な家だね」
見事に分かれる反応。
電車に20分程揺られて、最寄り駅から徒歩5分。ドデカい奈々の家に到着。
家ってか大魔王の城…………なーんちゃって天使のお城ですよねーっ!
殺気を感じて慌てて思考を変える。
「ねぇ! 本当に奈々に会う気なの!?」
「当たり前やん! 電話も出ぇへんし! はよ呼び鈴鳴らしぃや!」
「いやでも……」
翔太が押せばいいじゃん!なんて言えないよね! なぜなら勝手に奈々の家を教えたあたしの身が危ないからね!
「なんやねんな! 押すでっ」
「あぁぁあああああ!!」
両手で翔太の体を止めたにも関わらず、ピンポーン……なんて庶民的な音は聞こえないけど翔太の指は確かにインターホンのボタンを押していた。
あぁ……押しちゃった……。
さよなら昴……あたし奈々にボッコボッコにされちゃう……。
『どちら様でしょうか?』
早速インターホンのスピーカーから聞き慣れた声が聞こえた。
「奈々さんと同じ学校の者です。向井透と言えば分かると思います」
キリっとした笑顔で答えたのは、あたしをカメラの前に差し出す翔太。
「透でーす……」
ヒクッと口元を引きつらせながら、あたしはカメラに向けて苦笑い。
翔太……あたしをダシにしたね? どこで覚えた、そんな技!
『透様、いらっしゃいませ』
あたしは三神家の使用人と仲がいいから、難なく入ることを許されてしまった。
3メートル以上ある門はすぐに開き、「おお……」と門を見上げている翔太に覚えてろよ!と思いながら仕方なく門を進んで玄関に向かう。
すると重そうなドアが開き、出迎えてくれたのはいつもの使用人さんたちではなかった。



