午後1時から3時のコースで、彼が予約しておいてくれるとのことだった。普通に2時間もあるのだ。エステのフルコース並みの時間。確か、タイマッサージは、アクロバットみたいなマッサージだったと思う。マッサージ師が、その全身を使ってマッサージしてくれるのだ。日本では、せいぜい、足つぼマッサージぐらいしか受けたことがなかったので、ちょっとわくわくしてきた。
 部屋に戻って、準備をしながら、わたしは、自分の気付かない間に鼻歌を歌っていた。
 急に楽しくなってきたのだ。こんなプランを出してくれたガイに、感謝しなくては。
 その予定が入ったというだけで、すっかり気分が良くなって、海辺を散歩しようという気持ちにまでなって、わたしは、ホテルを出て、海岸へと歩いた。
 その途中、実は、胸の中に去来したのは、あの彼に会えるかもしれない、という思いだった。昨日あんなことがあったというのに、もし会えたらと考えると、少し、胸がどきどきした。ばかな子。

 砂浜に降り立つと、地面からの、強いというよりも、鋭い日差しの照り返しが思った以上にすごくて、数メートル歩いただけで、汗が出て来てしまった。水着で来れば良かったのに、普通のワンピースとサンダル姿で来たのだ。すぐに、ワンピースは汗でぐしょ濡れになってしまった。それに、見た感じ、あの彼は居ないようだった。たまらなく暑くなって、風景を楽しむ余裕も無くなって来たので、わたしは、仕方なく引き返すことにした。手を団扇代わりにひらひらと動かしてみるけど、もちろん、全然効果なし。余計に、湿気を帯びた空気が自分にまとわりつくようだった。