太陽が見てるから

4番打者、健吾は、長い長い飛打を放ち、でも、西工業の中堅手に捕られてアウト。


1回の表、南高校先制1。


みんなが初回からもぎとってくれた1点を楯に、おれはマウンドに上った。


ロジンを手のひらでポンポンと転がす。


1球目を投じて、額の汗をアンダーシャツでぐいっと拭った。


ボール。


肩が震える。


なんで、こんなに痛えんだよ。


へんな汗が吹き出し、体が震えた。


今日の風向きが、昨日までと違う事にはっきりと気付いた。


汗みどろの首筋を撫でていく強めの風は、バッグスタンドに向かって吹いていた。


昨日までは、バックスタンドからホームベースに向かって吹いていたのに。


梅雨明け直後の風向きは変わりやすい。


午前と午後では、まるで違う。


気温も、湿度も、ぜんぜん違う。


それでも初回はなんとか投げきった。


1番打者を、ショートライナー。


2番打者は、ライトゴロ。


浅く守備していた昌樹の好返球に助けられた。


3番打者をサードゴロに打ち捕り、スリーアウト、チェンジ。


1回が終わって、1対0。


南高校1点のリードで迎えた、2回表の攻撃。


しかし、やはり決勝なのだと思い知らされた。


初回のようにはいかなかった。


西工業のエースは気持ちを切り替えて、好投。


5番打者、勇気がサードにぼてぼてのゴロ。


ワンアウト。


6番打者、大輝は三振。


ツーアウト。


7番打者、遠藤がショートフライに倒れ、スリーアウト、チェンジ。


走者を1人も出さないまま、あっけなく2回裏の守備になった。


まだ1イニングしか投げてないってのに、おれの体はかなりの疲労感に襲われていた。