蜜事中の愛してるなんて信じない


 自動販売機に向かうと思いきや、正志は椅子に座った。

 その様子に入り口付近で、頭の上にハテナマークを浮かべている私を正志は手招きで呼ぶ。
 なんだなんだと思いながら、正志の前に立つと、正志は私の左手を取った。

 そして、何かを握らせた。

「俺、コーラ」

「は?」

「コーラと、何かお前の好きなモン買って来い」

「それって、アンタの分も買って来いってこと?」

「そ。お遣い」

「お遣いって、ねえ!
自販機すぐ目の前じゃないの。三歩よ、三歩。
自分の分は自分で買ったら?」

「ガキはお遣い頼むと喜ぶだろ?」

「ガキじゃないし。喜ばないし。これってただのパシリじゃん」

「んなこと言ってっと、お前も『自分の分は自分で買え』って言われるぞ、俺に」

「う……」

 強引に家から引っ張り出された私は、無一文なのだ。

 このパシリこそが、『課外授業』真の策略のような気がしてくる。
 しかし、財布すらもっていないのでしょうがない。

 しぶしぶ自販機に向かう。

 悔しい、悔しい、悔しい。
 悔しいことこの上ない。