「新しい道を選ぶならそれでもいいと思った。でも凛ちゃんは……ずっと春樹だけを思っていた、だろ?」 「はい」 「だったら全部を知った上で、もう一度二人で向き合ったらいい」 それは……マスターの心からの優しさだった。 一人で強くなったなんて妄想で、結局春樹の手のひらの中で私は一歩歩き出しただけで この恩を返そう。 あと少し。 春樹が戻ってきたなら……。 まさか、この1年で二人の間に隙間が出来ていたなんて想いもせずに 春樹も同じ気持ちでいてくれるんだと、そう信じて疑いもしなかった。