ノックと共に個室の扉が開いて……何度目かの刑事が顔を出す。 見舞いにくる人間なんていない。 どうせ私は……一人だから。 「浅野さんがまだ口を割らなくてね」 苦笑いをしているこの小太りな男だって、内心は何を思っているか分かったもんじゃない。 私と春樹の関係を疑ってるのがバレバレで、時に優しく、時に猫撫で声で話を聞きだそうとするから……吐き気がする。 春樹が言わないなら……私からも言う必要なんてない。 「浅野さんとは時々クラブですれ違う程度の顔見知りです」 ただ、それだけ。