「相変わらず眠れない?」 「……うん」 心配そうに私の顔を覗きこむから、一気に千波さんの甘いシャンプーの香りに包まれる。 「これもダメ、か」 手にしたのはいつもの救急箱に入っている安定剤。 「昔は眠れたんだけど……」 「耐性がついたかな?」 千波さんが言うには、毎日同じ量を服用していると体が慣れてしまって、だんだんと薬の効き目が悪くなるらしい。 「それじゃあさ、新しい薬貰ったから試してみなよ」