あたしたちは他愛もない世間話をしながら歩いていたが、あるところでふと達郎が足をとめた。

見上げた視線の先には一軒のアパート。

それはだいぶ古い木造アパートだった。

2階建てで真ん中に玄関があり、そこから左右に4つずつ窓が見える。

計8部屋の共同アパートのようだ。表札には『ハイツ田畑』とあった。

「どうしたの」

「なんでこのアパートだけ真っ暗なんだ?」

「あ、ホントだ」

時間は夜の7時近く。
あたりはもう闇に包まれている。

街灯や周辺の家々には、すでに明かりが点いている。

なのにこのアパートだけが真っ暗だった。

あたしは最初、アパートの住人が全員留守なのかと思った。

しかしアパートの玄関にあった大きなライトにも明かりは点いてなかった。