私には大好きなものがあった。

嫌いなもののほうが多かったから好きなものは大切にしたかった。





その日私と柊くんは駅前の広場のベンチに座っていた。



秘密基地がなくなってからは路上ライブの回数が増えていた。

路上ライブが終わっても帰らないでおしゃべりしていた。



「かりんさぁ~」



突然柊くんが真面目な顔でこっちを向いた。



「なんで『かりん』になったか知りたくない?」

「知りたい!」

私は即答した。