FAKE‐LAKE

「アツキ、ちょっといい?」

「何?」

どこか遠くを見ていたアツキの視線が彼女をとらえるより先に、リーナはアツキの首に腕を回し、彼をそっと抱き寄せた。

「……なっ」

頬にふわりと髪が触れる。彼女が好きなジャスミンの香りと柔らかな温もりがアツキを包んだ。

「アツキね、時々ものすごく悲しい瞳(め)をするの」

知ってた? と、問いかけるリーナの優しい声がすぐそばで聞こえ、アツキの鼓動がトク、と速くなる。

「独りで海の底に沈んでいるような。そんな瞳」

ぎゅ、と腕の力を込めて彼女は続けた。

「……忘れないで。叔父さんも私も、アツキの味方だよ。何があっても」

黙っているアツキの腕が、おずおずとリーナの華奢な背中にまわる。