FAKE‐LAKE

「アンジェ?」
 仕事から帰ってきたおじさんは、部屋の隅で泣きつかれて眠っているアンジェに呼びかけた。
「どうしたんだ、こんな所で」
 抱き上げた瞬間、アンジェは悲鳴をあげた。博士だと思ったのだ。
「どうした、アンジェ」
 恐怖に見開いた瞳におじさんの心配そうな顔が映る。
「おじ、さ……」
 乾いたばかりの頬にまた涙が伝った。しがみついて泣きじゃくるアンジェの背中を、優しい大きな手がさすってくれる。
「ひ、独りに、しないで」
 いつも我慢していた言葉が、涙と一緒に零れ落ちた。
「独りぼっち、が、怖いの」
 おじさんの腕に抱かれほっとしたアンジェは、震えながら本当の気持ちを話した。
「……ごめんな、一人にして」
 でももう大丈夫、とおじさんはアンジェの顔を覗きこんだ。
「ほら、おじさんがそばにいるだろう?」
 ぽろぽろと零れる涙を拭ってくれる温かい手。大好きな手。信頼している人の声。
「もう、大丈夫だよ」
 アンジェは安心したように笑顔を見せた。
「さ、おじさんはこれからご飯だ。アンジェも少し食べるかい?」
 こくん、と頷く。お腹は空いていないけれど、おじさんのそばにいたい。
 よし、と立ち上がったおじさんは一瞬何か考え、もう一度しゃがみこんだ。きょとんとしているアンジェに笑いかけ、両手を開く。
「おいで、アンジェ」
 迷う事無く、アンジェは心から信頼しているその腕の中に飛び込んだ。