FAKE‐LAKE

「手を出せ。手当てする」

溜息をついてセティは鞄を開けた。

「舐めときゃ治る。放っといてくれ」

「アツキ」

意地をはるアツキに、セティの口調が厳しくなった。

「お前の気持ちは分かる。でも憎しみはお前の事も誰の事も幸せにしないぞ」

部屋の空気がさらに張り詰めた。長い前髪の間から睨んでいるアツキの瞳に殺気に似たものが浮かんだ。

「……綺麗事なんか聞きたくねぇよ」

乱暴に扉を閉め、アツキは部屋を飛び出して行った。

訪れた静寂にセティは頭を抱える。

アツキの傷は、自分が考えていたより深い。手当てを拒んだのは、手の傷の事だけではないのだろう。心の傷も、腫れている時に触られたら声をあげたくなる程痛む。彼の攻撃的な言動は、倦んだ傷を抱えた心の悲鳴なのだ。

どうしたら、痛みを最小限に抑えて治療してやれるだろう。


一番の着信ランプが光った。セティの顔に緊張が走った。