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朝の光が窓からさしこみ、アンジェは陽射しの温かさで目を覚ました。
昨夜の雨が嘘のような青空。こんな天気のいい日は、湖の色がとびきり綺麗だ。
今日は一日湖のそばで過ごそう。独り言を呟き、アンジェはベッドから下りて伸びをした。スケッチブックと色鉛筆を抱えて階下へ向かう。部屋の中は春らしくぽかぽかと暖かい。
食べるかどうかは分からないけれど、何か持って行こう。アンジェは林檎を一つ、袋に入れた。ふと、戸棚にあるパンが目に入る。ニールが美味しいと力説していたパン。食欲は無いけれど、一応持って行こう。
袋にパンと干し葡萄を一房追加した。好物の胡桃も忘れずに。
大きな扉――そう感じるのはまだ彼が少年だからか――を開け、アンジェは眩しい陽射しに目を細めた。まだ空気がほんのりと湿っている。
アンジェはいつも通り首から下げた鍵で施錠しながら、誰も来ないし盗んで得になるものもないのに、と“我が家”を見上げた。そうしなさいと誰かに教わったから、無意味に思えても忘れずそうするけれど。



