◇ ◇ ◇
「一体どれだけ時間がかかってると思っているんだ!」
バン! と机を叩く音が灰色の壁に響く。
「もう半年だぞ? あんな目立つ姿の小僧一人どうして見つけられない!」
机の向こうから苛々と怒鳴り散らす白髪混じりの男性に、青年兵士は小声で謝り深々と頭を下げた。
同じ愚痴を何度も聞かされているのだろう、形式的な謝罪に幾分溜息が混じっている。
「全く、丸腰の子どもに逃げられるとは、我が国の軍隊は本当に軍隊なのかね。平和過ぎて気が緩んでいるんじゃないのか」
厭味たらしい言葉には敢えて反応せず、兵士は淡々と話を切り出した。
「国内・国外くまなく探しております。一番可能性のあるリアレスクにも何人か潜り込ませています。……ただ」
心なし語気を強め、続ける。
「公に出来ない捜索なものですから。時間をかけるしかないのです」
一瞬言葉に詰まる男性――ウィリス・フロスト博士を、彼は涼しい眼差しで見据えた。



