FAKE‐LAKE

「今まで通り“先生”でいいよ」
 ぽん、とアンジェの肩を叩き、医師は鞄を手にした。その手は優しかったが、名前を教えてはくれなかった。それは余計に疑問を膨らませる。
 僕は、何の病気なんだろう。先生は一体、どこの誰なんだろう。
「……ありがとうございました」
 いつものように礼を言い、アンジェは医師を見送った。坂を下りていく彼の栗色の髪が、陽の光に透けて金色に光っていた。


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「なんだ、遠征に行ってたのか」
 帰ってきたセティの白衣姿を見て、アツキは安心したように笑った。
 セティは時々、何も言わずに何日かいなくなる。そして帰って来てもどこに行っていたのか、絶対に言わない。アツキが唯一知っているのは遠征、つまり“リアレスクのお坊ちゃん”の診察の事だけだ。