FAKE‐LAKE

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

 アンジェはスケッチブックを閉じてテーブルに置き、ソファに横になった。
 興味津々で自分を見るニールの人懐っこい笑顔を思い出す。嬉しくはないけれど、かと言って嫌な訳でもない。
 逆に、自分に興味を持つニールの方が興味深い人だと思う。何故そんなに他人に関心があるのだろう。不思議な人だ。
 何が楽しくてあんなに笑っているんだろう。
 しんとした部屋に、アンジェの吐息が大きく響いた。


 古い壁掛け時計が夕食時である事を知らせた。アンジェは慣れた手つきでランプに明かりをともし、果物カゴから林檎を一つ手に取った。棚のいつもの場所から薬を一回分取り出し、スケッチブックを脇に抱えて二階へ上がる。
 アンジェの住んでいる家はこじんまりした二階建てだ。こじんまり、と言っても一人で住むには広すぎるけれど。
 一階は居間。入口から入って左に暖炉が、右にキッチンと戸棚がある。キッチンの上はロフトになっていて、アンジェはそこに画材や今まで描いた絵を置いている。いわゆる物置場だ。
 二階は二つ部屋があるが、アンジェは部屋の仕切りになっている扉を開けたままにして使っていた。
 景色が良く見える方にベッドを置き、いつでも絵を描けるようにベッド脇の大きなテーブルには普段使っている画用紙と色鉛筆を広げたままにしている。薄いカーテンで仕切った向こう側の部屋には、衣類や本などを収納していた。
 二つ窓があるうち日当たりのいい方にミニバラの鉢が三つ並べてあり、白・紅・薄紫の花を幾つも咲かせている。
 もう一方の窓からは杏の木が見える。手が届く所に枝がのびていて、春には花を、秋には美味しい実をアンジェにプレゼントしてくれる。
 林檎とスケッチブックをテーブルに置き、アンジェはベッドに身を預けて深く息をついた。