げほ、と咳込んでセティは血を吐いた。レイを庇って撃たれた背中に鮮やかな赤が広がっていく。
次第に気が遠くなる中、リーナとアツキの笑顔が脳裏を過ぎった。
『死』が、そこまで来ている。ざわざわと背筋をはい上がるような恐怖感が彼を襲う。
それでもセティはレイを庇う腕を離そうとしなかった。
「よくも……裏切ってくれたな」
よろよろと博士はセティに近付いて来る。
「もう少しで……楽になれたのに」
くく、と笑う博士は明らかに狂っていた。淀んだその目にたぎるのは恨み、憎しみ。言いようのない深い悲しみ。
セティのこめかみに銃を当て、博士は呻くように言う。
「お前はあいつらと同罪だ。妻と息子を殺した責任を取ってもらう」
“妻と息子を殺した”
薄い意識の中、セティは博士の部屋で見た写真を思い出した。教授の言うとおり、あれはやはり博士の――
博士が引き金を引こうとした時、扉が開き空を切って細い光が飛んできた。



