FAKE‐LAKE

「最後に姿を見た者の話ではリアレスクの湖に落ちたとの事。ですからそのまま水死した可能性も無い訳ではありません」
「でも遺体が見つからなかっただろう」
「ええ、ですから」
 一呼吸置いて反撃する。
「こうして地道な捜索を続けている訳です」
 手掛かりが一切無い中水面下で、と付け加えると、博士はむっすりと黙り込んだ。
 青年兵士は心の中でクスリと笑う。
 こちらとて出来る事はやっているのだ。それ以上の無理な要求をしてくる博士をどうやって黙らせるか。それは、毎度博士の“厭味聞き”をさせられている彼の秘かな楽しみとなっていた。無論、表情には一切出さないが。
「わかった、もういい。セトナには待ってくれるよう連絡する」
 そう言ってフロスト博士は受話機に手をのばした。
「その前に、博士。もう一つ報告が」
「何だ」
 博士は不機嫌極まりない表情で青年を振り返る。彼はつい、と博士に近づき、小声で言った。
「これは逃げ出した後、奴を基地内で取り押さえようとした者の話なのですが――」
 報告を聞いているうちに、不機嫌だった博士の顔が徐々に緩んでいった。口許に不敵な笑みを浮かべ、博士は兵士に言った。
「それは、何がなんでも奴を見つけだして確かめなくてはいけないな」
 引き続き捜索を続けろと偉そうに命令し、博士は受話器を握った。