FAKE‐LAKE

「まぁ、坊ちゃんの暮らしに比べたらここも都会かもしれないけどな」
 アンジェの家を思い出し、ニールは腕組みした。
 生活に必要な水は雨水を利用し、飲料水はどこかの涌き水を必要な分だけ汲んできてると、いつだったか聞いた。
さすがに水道はあるもんな。うん、この街は都会だ。
 ニールが一人でぶつぶつ言っていると、お兄ちゃん独り言多過ぎ、とカーテンの向こうからケラケラ笑われた。
 いつもの事だ。妹たちの笑いを意に介すことなく、ニールは床にころんと横になった。
 そういえばまた、アンジェとあまり関わるなって親方が言ってたけど、何かあったのかな。出来ればおれはアンジェと友達になりたいんだけど。
『……仕方ないんだ。依頼主からの指示だからね』
 アルクの申し訳なさそうな表情を思い出す。
『彼のためにもお前のためにも、仕事の関係以上親しくならない方が良い』
 それが分からない。どうして?
 ニールの眉間にきゅっとシワが寄る。
 アンジェだって、あんな森に一人で住んでいるのは寂しいだろうに。
 一体、依頼主はどんな人なんだろう。どうしてアンジェをあんな森の中に住ませているんだろう。依頼主は親ではないと、以前聞いた。
 じゃあ親はどこに? アンジェの事が心配じゃないのか?
 親方は寂しそうに微笑むだけで教えてはくれない。依頼主の指示だから、とだけ言って。
「仕事、なんだもんな……」
 ぽつり、呟いてみる。
 言い聞かせるように口にしたその言葉は、どんなに頑張っても自分の本心ではなくて。
 でも、“なぜ?”の問いに誰も答えてはくれない。
 ニールは目をつぶり、大きく溜息をついた。