FAKE‐LAKE

「そういやソニアの美術館から個展の依頼が来たんだって?」

「あ、個展は断ったよ」

アンジェは空になったニールのカップに紅茶を注いだ。

この間、リアレスクの隣の隣の国ソニアの美術館から“うちで個展を開かないか”と手紙が来た。

なんでもそこの館長がリアレスクの市場で見つけたアンジェの絵をやたら気に入ったらしい。

「え、なんで断ったんだよ? せっかくのチャンスがもったいない」

「だって僕、個展開けるような絵描いてないし」

僕の絵、湖ばっかりだから。そう言ってアンジェは笑い、続けた。

「代わりに、きちんとした画材で一枚仕上げて美術館に送る事にしたんだ。お金出すから何枚か譲ってくれって館長さんが言ってくれたから。いつものスケッチブックじゃなんだし、水彩画にしようと思ってるんだ」

「へぇ、よかったな」

ニールは紅茶に蜂蜜を入れながら相槌をうった。瓶を傾けて蜂蜜をカップに落とす様子を見て、アンジェはクスと思い出し笑いをする。

「なんだよ」

「レイみたい、と思って」

アンジェの口からレイの名前を聞くのは五年振りで、ニールは無意味に慌てた。