FAKE‐LAKE

数ヶ月振りに目を覚ましたレイは何も覚えていなかった。言葉も話せず体を動かす事も出来なかった。

ただ周りの状況を把握しようとしてか、大きな黄緑色の瞳が人の顔を、目に映る景色をじっと眺めている。

何か訴えたい時は泣く。レイは生まれたばかりの赤ん坊のような状態になっていた。


みんな代わる代わるレイのそばにいた。反応が無くても話しかけたり、本を読んで聞かせたりした。

動かない手足を優しくさすったり、暖かい日は車椅子に乗せて庭を散歩したり。


少し経つとレイは人の声に反応して振り向くようになった。笑顔に反応して小さく笑い、人がいないと寂しいと泣く。

数ヶ月経つ頃には、歩けないものの手を動かせるようになり、自力で体を起こせるようにもなった。

成長していく子どものように少しずつ回復していくレイの姿を見てみんな喜んだ。


しかし、回復が進むにつれてレイは不安定になりはじめた。

夜中に突然泣き叫んだり、逃げだそうとしてベッドから落ちたりした。

「過去の記憶が戻り始めているのかも知れないな」

「え、薬で記憶を消されたんじゃなかったのか?」

「消すと言うより思い出せなくしただけだ。だから何かのきっかけで思い出す事もある。実際アンジェも薬を飲まされたけど思い出したからな」

セティの予想通り、レイは過去を――虐待された記憶を思い出しかけていた。


それは毎夜の悪夢の中――