FAKE‐LAKE

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部屋の隅にレイは倒れていた。博士が入ってきてもぴくりとも反応しない。

「今度こそ忘れただろうな」

酷く苦しんだ跡が残る部屋を眺めながら博士は脅すように問い詰めた。レイは全く反応しない。

レイは薬の影響で記憶を失っただけでなく、思考力もほとんど機能しなくなっていた。

なぜ自分がこんなに苦しめられているのか。一体何のためにここにいるのか。

そう疑問に思う事さえもレイは忘れてしまった。麻痺した心。消えていく感情。壊れていく自分。

レイの虚ろで生気の無い瞳は、ぼんやりとどこか遠くを見つめている。

自分は誰かを忘れ、大半の言葉も忘れた。今のレイは人形とほぼ変わらない。

それでも“家族”を忘れたくない、最期まで抵抗するのだという強い意志が、彼の意識のどこかに残っていたのだろう。

博士に名前を問われたレイは再びアンジェの名前を口にした。

「どうしてだ! どうして上手くいかない!」

博士は言うとおりにならないレイを掴んで床に叩き付けた。

彼の体はもう痛みすら感じない。