「お前さんには体力くらいしか取り柄が無いからねぇ」
どこからか聞こえてきた嫌味な声に、ニールはしかめっつらをして言い返す。
「おお、ば、ば、様には言われたくないね」
“ばば”を一文字ずつはっきり発音して強調してやる。
「おやおや、ご挨拶だねぇ。誰が“ばば”だって?」
奥から老婦人が姿を現した。アルクの母親のルミカだ。
計算高そうに見える細い眉、細い顔。所長と全っ然似てない、とニールはいつも思う。本当に親子なんだろうかと疑いたくなる。
「だってもう七十歳過ぎたろ? おれにしたらおおばばだよ」
「なに言ってんだい。七十なんてまだまだ青春の半ば位なもんさ」
「うえ、幾つまで生きる気だよ」
おおばば様なら二百は余裕でいけそうだけどさ、とニールはこっそり呟く。
「全く、可愛いげのない“坊や”だこと」
ルミカの聞き捨てならない台詞に、ニールはむっとする。
「“坊や”って言うなよ! おれ、今年で成人なんだぞ。もう十八歳、大人の仲間入りさ」
「はっはぁ、中身はまーだまだ成人には程遠い、形ばかりの大人かい? あたしにしちゃ青二才とさえ言ってやれない、ちっさいちっさい坊やにしか見えないけどねぇ」
わざと眼鏡をかけ直して目を細め、嫌みたらしく言うところが余計に憎らしい。
「いつも楽しそうですね」
笑い声が聞こえて入口を振り返ると、金髪の男性がニコニコと二人のやり取りを見ていた。脇に新聞の束を抱えた彼はかなり長身で、所内に入るのに少し身をかがめる必要があった。
「あ、シアナ! こんちは!」
「こんにちは、ニール。今日はやけにご機嫌だね」
シアナは爽やかな笑顔で挨拶を返し、ルミカに会釈して夕刊を手渡した。
「何か良い事でもあったのかい? ニール」
赤茶の髪をくしゃりと撫でてくれる大きな手がくすぐったい。
長男で、しかも一家の大黒柱でもあるニールは、この人当たりが良い新聞配達員を兄貴と慕っていた。
どこからか聞こえてきた嫌味な声に、ニールはしかめっつらをして言い返す。
「おお、ば、ば、様には言われたくないね」
“ばば”を一文字ずつはっきり発音して強調してやる。
「おやおや、ご挨拶だねぇ。誰が“ばば”だって?」
奥から老婦人が姿を現した。アルクの母親のルミカだ。
計算高そうに見える細い眉、細い顔。所長と全っ然似てない、とニールはいつも思う。本当に親子なんだろうかと疑いたくなる。
「だってもう七十歳過ぎたろ? おれにしたらおおばばだよ」
「なに言ってんだい。七十なんてまだまだ青春の半ば位なもんさ」
「うえ、幾つまで生きる気だよ」
おおばば様なら二百は余裕でいけそうだけどさ、とニールはこっそり呟く。
「全く、可愛いげのない“坊や”だこと」
ルミカの聞き捨てならない台詞に、ニールはむっとする。
「“坊や”って言うなよ! おれ、今年で成人なんだぞ。もう十八歳、大人の仲間入りさ」
「はっはぁ、中身はまーだまだ成人には程遠い、形ばかりの大人かい? あたしにしちゃ青二才とさえ言ってやれない、ちっさいちっさい坊やにしか見えないけどねぇ」
わざと眼鏡をかけ直して目を細め、嫌みたらしく言うところが余計に憎らしい。
「いつも楽しそうですね」
笑い声が聞こえて入口を振り返ると、金髪の男性がニコニコと二人のやり取りを見ていた。脇に新聞の束を抱えた彼はかなり長身で、所内に入るのに少し身をかがめる必要があった。
「あ、シアナ! こんちは!」
「こんにちは、ニール。今日はやけにご機嫌だね」
シアナは爽やかな笑顔で挨拶を返し、ルミカに会釈して夕刊を手渡した。
「何か良い事でもあったのかい? ニール」
赤茶の髪をくしゃりと撫でてくれる大きな手がくすぐったい。
長男で、しかも一家の大黒柱でもあるニールは、この人当たりが良い新聞配達員を兄貴と慕っていた。



