FAKE‐LAKE

「やっぱり、って?」
 アンジェはスケッチブックを切り株の上に置き、レイの隣に座った。
「同じだな、って」
 小さく微笑み、レイは目を湖から離さずに答える。
「アンジェの、あの絵を初めて見た時に思った。この色、僕は知ってるって」
 そう言えばレイは、湖の絵のうち一枚を何度も何度も、毎日見ていた。単にその絵が気に入ったのだろうと思っていたのだけど、理由があったのか。
「……何と同じ?」
 恐る恐る聞いてみる。
 短い沈黙の後、レイはぎゅっと膝を抱え直し小さく息をついた。
「……“湖の国”に」
 “湖の国”。
 初めて聞く国の名前だが、地理をほとんど知らないアンジェはそういう国があるんだと素直に納得した。
「それは、レイの故郷?」
 レイは無言で頷く。故郷を思い出しているのか、遠い目をしていた。
「……本当に存在するのかさえわからないけど」
 可笑しいよね、と、レイは無理に作った笑顔でアンジェを振り返る。
 アンジェは笑っていなかった。その瞳に浮かんでいるのは、レイが予想していた嘲笑でも同情でもなくて。
 何を思っているのかわからない、でも心の中を引き出されるような不思議な瞳。
 ふいに喉の奥に何かが込み上げてきて、レイは膝に顔を埋めた。