FAKE‐LAKE

ぐらりと視界が揺れ、膝をついた。眩暈がして気が遠くなった。

「……っ、こんな時に……!」

自分に苛立ち、セティはぐいと唇の血を拭った。

倒れている場合じゃない。とにかくレイを連れ出さなければ。

「……動くな」

突然背後から低い声がして、セティは固まった。

いつの間にか博士が起き上がっていた。あんなに麻酔薬を吸わせたのにと訝るセティは、自分が気を失いかけていたのが一瞬ではなかった事を知らなかった。時計の針はすでに四時二〇分を過ぎていた。

よろよろしながら立ち上がる博士の手には銃が握られていた。その目は尋常ではなかった。

「裏切り者も実験体も始末してやる」

震えている銃口はまっすぐ、セティの腕にいるレイを狙っている。

――逃げられない――


響く、銃声。

研究室の白い床が、診察台の白いシーツが。

染み一つ無い白衣の背中がみるみる赤く染まった。