FAKE‐LAKE

「逃げんのか」

少し離れた所で見ていたニールは厳しい声で退路を封じた。

「憎まれて当然の事をしたんだろ? 罪滅ぼしもしない気かよ」

結局口だけか、とニールは呟く。

迷っていた教授は意を決してアンジェに手をのばした。

「来るな! 触るな!」

アンジェは泣きながら教授を何度も拒絶する。教授が思い切って抱きしめるとアンジェは暴れながら叫んだ。

「あんた達が殺したんだ! 返せ、レイを返せ!!」

「アンジェ、落ち着け。傷が開く」

「先生も、おじさんも僕を裏切った。大人なんか二度と信じない」

ぎゅっと腕の力を強め、教授は言った。

「信じなくていい」

教授の言葉にアンジェの動きが止まった。

「一生憎んでもいいから」

懐かしい大きな手。優しい声。あたたかい温もり。

いや、信じない。信じない、信じない。

「恨んでいい。だから……」

生きてくれ。教授は最後まで言葉にはせず腕に力を込めた。

アンジェの脳裏に昔の記憶が過ぎる。

『おいでアンジェ』
『よくがんばったね、えらいよ』
『もう大丈夫だ』

アンジェ、アンジェ。優しい声が耳に響く。

信じない。信じない――……シンジタイ。

アンジェはぎゅっと教授にしがみついた。

「うっ……うわあぁぁ――……!!」

初めて声を上げ、アンジェは号泣した。教授は泣きつづける彼をしっかりと抱きしめる。